現代美術家の舘鼻則孝(Noritaka Tatehana)氏が
「NORITAKA TATEHANA RETHINK―舘鼻則孝と香りの日本文化―」を開催。
9月14日(金)~9月16日(日)の期間
「kudan house(旧山口萬吉邸)」で開催した個展の記録です。
- レディーガガが身に付けたことで話題となった「ヒールレスシューズ」
- 手彩色された真鍮鋳物の「カメリア」
- 「源氏香の図」をモチーフに制作された石川県輪島市の伝統工芸士によって仕上げられた「香炉」
- 遊女の煙管を現代的に表現した作品「Theory of the Elements」
など、見どころ満載でした。
「kudan house(旧山口萬吉邸)」とは?
いきなりですが、「kudan house(旧山口萬吉邸)」って?と思ったのでまとめておきます。
「旧山口萬吉邸」について
まずは旧山口萬吉邸についてですが
1897年(明治30年)生まれの新潟県長岡市出身の財界人である山口萬吉さんの邸宅。
東京メトロ半蔵門線・東西線・都営新宿線九段下駅から徒歩5分に位置する1927年に竣工した「スパニッシュ風建築」で、
内藤多仲、木子七郎、今井兼次の3人の日本を代表する設計陣が設計しました。
- 敷地面積:962.18㎡
- 延床面積:847.16㎡
の鉄筋コンクリート造で地下1階地上3階の洋館です。
延床面積が約850㎡ってどれくらいでしょうか。
3LDKで85㎡のマンションが10室分。。。
850㎡の邸宅を同じ千代田区で賃貸すると、
3LDKで164.69㎡のマンションが148万円/月でしたので(SUUMO調べ)
763万円/月になります。げっ!!
建築物自体が違いますし、庭や建物のデザインも含めて比較することはできませんが、庶民には関係のないお話ですね。
見学できてよかったです。
「kudan house」ついて
で、この「旧山口萬吉邸」を「先代の山口萬吉が築いた邸宅を次世代に遺したい」という所有者の想いのもと、
- 東急電鉄
- 竹中工務店
- 東邦レオ
の3社が共同で再生し、2018年9月より会員制のビジネスイノベーション拠点として運用開始したのが
「kudan house」です。
2018年5月には「国の登録有形文化材」に認定されています。
歴史的建築物を改修し文化財認定を受けるとなると、消防法や建築基準法など現行の法規に適用させる必要があるなど大変な苦労をされたのではないでしょうか。
ちなみに運営会社は東邦レオの関連会社「株式会社NI-WA」です。
運営会社について
NI-WAは、「利用者視点」をもとに外構・広場・屋上など共用空間を用いて賑わいを創出するためのコンサルティングならびに運営実務を行う実践型のプロデュース企業(東邦レオグループ)です。日本に古来から続く、花や茶を楽しむ文化の美意識である日本庭園は、主人と庭師が共有する奥ゆかしい世界観をもとに、空間を表現する役割を担ってきました。kudan houseでは、庭を含め建物全体を自らの審美眼を研ぎ澄ます茶の世界と捉え、「和のアート」から学ぶリベラルアーツと新たなビジネススタイルの創出に貢献します。
出典:http://www.takenaka.co.jp/news/2018/08/03/180810.pdf
舘鼻則孝(NORITAKA TATEHANA RETHINK)と香りの日本文化
さて、ここからは「香の日本文化」を鑑賞していきます。
旧山口萬吉邸「1F」
舘鼻則孝の代表作『ヒールレスシューズ』は、遊女の履く高下駄から着想を得た現代日本のファッションとして世界で知られています。ファッションデザイナーを志していた高校時代に初めて靴を制作して以来、15年以上に渡って作品制作のための素材として革に注目し、様々なアプローチを現在も続けています。遊女の簪をモチーフとした彫刻作品やアーチ型の絵画作品においても革を支持体や加飾として使用した実験的な作品です。
エントランスで入場人数を制限しながら混雑しないように配慮されていました。
写真は順番待ちの様子です。
邸内に入るとかかとを持ち上げた脚のマネキンが林立しています。スラっとして引き締まった女性の脚でしょうか。
その傍らには舘鼻氏の代表作「ヒールレスシューズ」
かかと側に回り込むとジッパーがありました。本当に着用することを考えて作られて作品なんですね。驚きました。
廊下?でしょうか。
かかとの低い「ヒールレスシューズ」です。先ほどのシューズと比較すると、違いがよくわかります。
そして突き当りには、遊女の簪(かんざし)をモチーフにした作品。
「Embossed Painting Series 2017」
このエンボス加工のパネルは何をモチーフにした絵画作品ででしょうか。
旧山口萬吉邸「B1F」
香りの日本文化を「RETHINK」して舘鼻が制作をした作品群には「源氏香の図」と呼ばれる図形的な紋様がモチーフとなっています。この紋様は、源氏物語の54帖のうちの52帖の巻名が附されています。また、5本のストライプの組み合わせによって成立する図形は、1960年代アメリカのミニマル・アートを彷彿とさせます。舘鼻は日本の伝統文化を新たにフォーマット化することで、過去から現代へと続くわだちを作品の中に見出しています。
B1Fに移動します。
奥に赤く光る物体が。暗くてボケてしまいました。
1Fにあったシューズの色違いですね。
こちらは「Heel-less Shoes Series,2018」今年の作品なんですね。
「源氏香の図」の紋様をモチーフにした漆作品。香道をやってる方はテンションがあがるのでしょうか。キレイな漆ですね。
こちらは「カメリア」です。手彩色した真鍮鋳物の椿です。
うす暗い木々の中、地面に落ちている多くの椿。その椿に木漏れ日が差し込む様子を「塩釜神社」で昨年見たのを思い出しました。
これはスツールでしょうか。反射した光が壁を装飾しているようで面白いですね。
「Homage to Taro Series:Hairpin/Sun,2016」
禍々しいですね。
こちらも源氏香の図。幾何学模様のような図形ですが、このように展示するとオブジェになりますね。伝統工芸士の技がそうさせるのでしょうか。
こちらが正面でした。
カメリアがチラ見出来ます。奥さんのお気に入り。高岡市の能作で制作しているとのこと。私の実家も高岡市で、昔は銅器・漆器の作成や卸売りをしていました。
次は2Fですが、1Fを経由していきます。
「Traces of a Continuing History,2015」
鋳物の骸骨です。こちらも能作で制作したそうです。
「香りの日本文化」をテーマにしているので、香が焚かれています。
白檀の甘くやわらかな香り、
すっきりとした残り香。
メインの階段を上り2Fに向かいます。
旧山口萬吉邸「2F」
源氏香の図が蒔絵によって描かれた球体の香炉は、本展のために新たに制作されました。香りの日本文化に焦点を当てた作品群の中心となる本作は、日本有数の漆器産地として知られる石川県輪島市の伝統工芸士の手によって仕上げられています。加えて、香老舗 松栄堂の松寿文庫より特別に出展されている貴重な資料を通じて、現代に至る香りの日本文化の軌跡を辿ることができるでしょう。
3Fで出迎えてくれるのが、源氏香の図の紋様をモチーフにした「源氏香の図 蒔絵高炉」2018
石川県輪島市の輪島塗りです。球体の香炉で紋様には金箔が蒔かれています。
隣室で開催されていた「聞香体験」。時間が合わずに体験できませんでした。
この部屋ではお香の原料を見ることが出来ました。
〇白檀(びゃくだん)
最もポピュラーな香木。
〇桂皮(けいひ)
シナニッケイ、セイロンニッケイ(クスノキ科)の樹皮を乾燥したもの。
〇貝香(かいこう)
巻貝の蓋で、主に保香剤として使用する。
〇乳香 (にゅうこう)
ニュウコウジュ(カンラン科)の幹から浸出した樹脂。
〇安息香 (あんそくこう)
アンソクコウノキ(エゴノキ科)の幹を傷付け浸出した樹脂。
〇竜脳(りゅうのう)
リュウノウジュ(フタバガキ科)の心材の空隙に結晶として析出したもの。
〇かっこう
フィリピン原産のシソ科の草本を乾燥したもの。
〇甘松(かんしょう)
ヒマラヤ山系、中国の山岳地帯が原産のオミナエシ科の多年生草本で、その根や茎から香料を採る。
〇山奈(さんな)
ショウガ科バンウコンの根茎を乾燥し切片にしたもの。
〇鬱金(うこん)
ショウガ科ウコン属の多年性草木ウコンの根茎。
〇丁子(ちょうじ)
チョウジノキ(フトモモ科)の花蕾を乾燥したもの。
〇大茴香(だいういきょう)
ダイウイキョウ(シキミ科)の果実を乾燥したもの。
が展示され、さらに
沈水香木(ぢんすいこうぼく)の大きな物も展示。
「水に沈む、香りのする木」だそうです。
どんな香りか想像できますか???
ベランダを通り次の展示に向かいます。この窓の形状に合わせて網戸を嵌めています。見たところサッシが見当たらないので、常時外気が入ってくるけれども、網戸で虫が来ないということですね。
このアイデア良いですね。
「源氏香図蒔絵 百人一首かるた」です。
こちらは版画でしょうか。ちょっと混雑してきたのでスルーしてしまいました。
「美人聞香図 葛飾北斎」
「葵牡丹文唐草蒔絵香割道具」
その名の通り香木を聞香用に小さく切りそろえる道具だそうです。立派ですね。
「蓮蜻蛉文様香炉 エミールガレ」
貴重な収蔵品が観れました。
旧山口萬吉邸「3F]
展示物は、舘鼻則孝の創作プロセス「RETHINK」という概念を最も体現した作品群で構成されています。遊女の煙管を現代的に表現した作品『Theory of the Elements』を中心として、同様に遊女の高下駄から着想を得た『Heel-less Shoes Series』や『Floating World Series』を展示しています。昨年より続く本展のシリーズ名ともなっている「NORITAKA TATEHANA RETHINK」その軌跡を追うドキュメンタリーフィルムでは、舘鼻と共に作品を創造する日本各地の職人達の姿が描かれています。
3Fではドキュメンタリーフィルムが流れていて、作品を制作する舘鼻氏や職人の方々を紹介。大変興味深い内容でした。
「Heel-less Shoes Series」
「Floating World Series」
ぱっと見て、ヒールレスシューズのケース?と思ってしまいました。高下駄ですね。
こちらは「heory of the Elements」
「heory of the Elements」は、遊女の煙管を現代的に表現した作品です。
JTの煙が出ないたばこ「プルームテック」のケースです。
本革や螺鈿細工のものがあり、限定販売していました。
たばこは吸わないので。。。
さいごに
奥さんに連れられて観に来ましたが、約1時間の「香りの日本文化」楽しめました。
「真鍮鋳物の椿」は奥さんが欲しがっていましたが、入手可能なら購入したいですね。