東京都現代美術館で2019年11月16日(土)→2020年2月16日(日)まで開催した「ミナ ペルホネン/皆川明 つづく」の感想です。
3年前に南青山のショップに奥さんに連れていかれ、一目ぼれして買ったタンバリンのミニバック。
その後タンバリンのトーストバックもプレゼントしてもらい、益々ファンになったミナ。
また、中村好文先生とのコラボ作品「shell house」。
こちらも興味深い作品で、ファッションだけじゃなく、建築、インテリアや食器なども楽しめる展覧会でした。
その模様を紹介していきます。
チケット売り場は開館前が混雑
チケット売り場は、開館時間10分ほど前に並びましたが、20名ほど並んでいました。展覧会に行くといつも思いますが、チケット購入は、事前購入がストレスフリーで良いですね。
「つづく」順路
「つづく」の会場は全8章で成立しています。基本的な順路は、パンフレットの通りですが、「会場内をご自身の順路で自由にご覧いただき、各章への想いを育みながらご鑑賞ください。」とのこと。
会場を順番に移動すると「実→森→風→芽→種→根→土→空」という順路になります。
自然や植物にまつわる言葉が選ばれています。
撮影可能なのは、入口、森、種の三か所と、パンフレットからはわかりませんが、空の一部。
「つづく」入口
入口では様々な記事が出迎えてくれます。ファンになって日が浅いため、それぞれがどの時代のデザインで。。。ということはわかりませんが、かわいいですよね。
この生地はどうやって洗うんだろう?というものも。
これだけ揃うと圧巻ですね。デザインの幅の広さが伺えます。
「つづく」実 tambourine(タンバリン)
実 tambourine(タンバリン)
ミナ ペルホネンを代表する刺繍柄のtambourine(タンバリン)に焦点を当てて、一つのデザインが生まれてから、生地になり、洋服やインテリアなど様々なプロダクトに展開していく様子を紹介します。25個の小さなドットが柔らかな円を描く刺繍柄は、2000-2001年秋冬コレクションで発表されたものです。円の形状やドットの間隔は不均一で、刺繍のふくらみにも差異があり、手描きされた原画の表情が丁寧に再現されています。
ミナ ペルホネン/皆川明 つづくより
実では、tambourine(タンバリン)柄の
- 洋服
- バック
- アクセサリー
- ステーショナリー
- 家具
など、説明にもある通り、タンバリン柄の生地がプロダクトに姿を変えていく様子が展示されています。
同じ柄でも、違うプロダクトになると、こんなに印象が違うのかと驚きました。全部揃えたくなりました。
「つづく」森 pieces of clothes(洋服の森)
ミナ ペルホネンではファッションの流行にとらわれないものづくりをしてきました。短いサイクルで大量消費されていく服に背を向け、シーズンを超えて長く繰り返し愛用してもらえる服を
目指しています。ここでは設立当初から2020年春夏コレクションまでの約25年分の服、400着以上を一堂に集め、年代をミックスして展示を構成しています。最新の服も過去の服も分け隔てなく、価値に変わりがないとするミナの哲学が現れています。
ミナ ペルホネン/皆川明 つづくより
400着以上が一同に会するなんてすごい。そもそもどの時代の柄なのかという知識がないため、古いのか新しいのかなど区別がつきません。
僕自身も気に入ったパンツや服は、ずっと着続けるという質で、そろそろ消費しつづけなければいけない社会ってどうなの?と思ってみたり、でも新しいものも興味が沸いてみたりと気持ちが揺れ動いているので、このような形で見せられると、感心?感動?してしまいます。
奥さんには、黄色のタンバリン柄のコートをカッコよく着こなして欲しいですね。
なんか30年以上前に、自分の母親が来ていたような気がする色合いでしょうか。
奥さんが似合うかどうかは、実際に着用している様子を見ないと素人には想像できませんね。
わお!風に揺られて飛んで行きそうですね。黄色い生地があることで足元が軽く見えるとか?
どれが欲しいかなあとか、どれが似合うかなあとか、これ可愛いけど無理~とか、そんな会話が弾みます。
「つづく」風 life and design(生活とデザイン)
ここではミナ ペルホネンの服を着ている人の「日常」を、映像作品でご覧いただきます。アトリエで産声を上げたデザインが、職人によってテキスタイルへ。そして服やプロダクトとなって人々の日常へと寄り添う旅に出ます。山形、沖縄、東京、パリの4都市を舞台に、4人の愛用者の生活や仕事に密着し、その日常を追いました(制作:藤井光)
ミナ ペルホネン/皆川明 つづくより
風は動画で、ミナの服を着て、どのように過ごしているのか垣間見れます。
登場する人は、日常的に着用しているようで、一般ピープルには高くて無理無理~などと思いながらも、「一日の中で一番長い時間着用する服は、気に入っているものが良いのか」などと考えながら、であれば、「僕の場合は同じパターンのデザインで色違いが3着ほどあれば、大丈夫かも」などと、手に入れる口実探しをしてみたり。
仮に年に3着だけあれば良くて、さらに何年も着続けることが可能なら、ミナの男性服が欲しいなと思った映像でした(笑)
これじゃ良くわかんないですね。
なんか、登場している人たちが、普段から丁寧に生活を送っているんだろうなあという印象で。。。
芽 designs for textiles(テキスタイルのためのデザイン)
ミナ ペルホネンのものづくりの特徴は、生地からデザインし、洋服に仕立てることです。ここでは、皆川明とインハウスデザイナー田中景子による生地のためのデザイン画を紹介します。手描きの線や色の重なりが印象的なプリント用原画、糸から織り組みまで考えられている織物用デザイン、ステッチの立体感を想起させる刺繍用図案は、その後、それぞれ国内有数の生地工場に手渡され、時間をかけてテキスタイルへと作り上げられます。その数は、合計3000種(色やベース生地の異なるものも含む)を超えています。
ミナ ペルホネン/皆川明 つづくより
皆川さんとインハウスデザインーの田中さんによるデザイン画です。
デザイン画だけを見ていると、かわいい、異形っぽい、不細工などの印象を持ってしまいました。
でも、それが刺繍として生地に織り込まれると、かわいく見えるのは不思議です。柄のバランスや色合いなどがマッチしているんでしょうね。また立体感が糸で表現されているのも軟らかさにつながるのでしょうか。
不思議。
種 idea and study(アイデアと試み)
ファッションブランドとして始まったミナ ペルホネンは、1999年にはオリジナルデザインの家具、2008年には食器のコレクションへと領域を広げ、国内外のブランドやクリエイターとの協働事業の件数も増加しています。ここでは、幅広い活動の根幹にある皆川明とミナ ペルホネンのものづくりの哲学やアイデアを、過去・現在・未来の試みを通して紹介します。奥に配されている「shell house(シェルハウス)」は、皆川が将来の夢として構想している「簡素で心地よい宿」のプロトタイプです(設計:中村好文)。
ミナ ペルホネン/皆川明 つづくより
種のコーナーは展示物が多種多様でした。
- ミナのロゴマーク
- 幸せの尊さを想うドレス
- 作陶作品
- パッチワークの石
- Foresta di Gemma(宝石の森)という名のクッション
- 両面が違う色の二重織の布
などが展示されていました。
さらに奥のエリアには、楽しみにしていた中村好文先生設計の「shell house(シェルハウス)」が展示されています。
順に紹介します。
ブランド設立当初に皆川が描いたもの。四角の中に不揃いの粒が並ぶ。「ひとりの人の中には複数で多様な「個性」が含まれている」という意味が込められている。
ミナ ペルホネン/皆川明 つづくより
ロゴマークに込められる意味は、ミナのブランドの理念と捉えることができますね。
- ひとりの中に個人に複数で多様な「個性」が含まれている。
- それならば、社会はもっと多様であり
- 人と違うことが当たり前である。
流行にとらわれないものづくりに通じています。
幸せの尊さを想うドレス
sometaimes lucky 2011→春夏
ひとつの服にひとうの四つ葉のクローバーを見つけることができる。「時々幸せ」という控えめな名前をつけて、幸せの尊さを想う。
ミナ ペルホネン/皆川明 つづくより
流石に、四つ葉のクローバー探してみませんでしたが(笑)、ふと目に飛び込んできたクローバーが四つ葉だったら嬉しいでしょうね。
ちょっとしたことにでも「幸せ」を感じることが出来ると、日々が幸せですよね。
安藤雅信×皆川明
多治見の陶作家安藤雅信との作陶は2010年から続いている。形を安藤、絵付けを皆川が受け持つ方法と、レリーフなどはデザインと絵付けを皆川が自ら行う。作陶への立体的な絵付けは画用紙とは違う表情となり、共作という工程が互いの仕事を引き立てている。
ミナ ペルホネン/皆川明 つづくより
何をモチーフにしているんでしょうか。
パッチワークの石です。
石を包むように余り布でパッチワーク。身体とは違う形に沿わせて不揃いの布が縫い合わされている。
偶然から生まれる有機的な形。21_21 DESIGN SIGHT「THIS PLAY![ディスプレイ!]」展のための作品。
ミナ ペルホネン/皆川明 つづくより
石にパッチワークって想像もしませんでした。
Foresta di Gemma(宝石の森)という名のクッションです。
生み出されたテキスタイルを、時もテーマも超えて融合させ有機的な形を生んだ「Foresta di Gemma(宝石の森)」。円周の異なる楕円形パーツを縫い合わせることで偶発的に生まれてくる形をクッションという機能の中に表現し、2018年にミラノサローネで発表した。
ミナ ペルホネン/皆川明 つづくより
パッチワークの石と同様に偶然から生まれる形を表現している作品です。ぬいぐるみ?と思いましたが、クッションなんですね。
なんと言ったら良いものか。抱き枕にすると良さそう。
これはdopという二重織の布です。
dopは布の両面が違う色の二重織でつくられている。主にインテリア用に開発され、家具に用いられる木や金属や革のように経年劣化によって風合いが魅力的になることを目的にしてる。経年劣化で擦り切れた箇所からは裏面の色が滲むように現れ、新たな表情として楽しむことができる。
ミナ ペルホネン/皆川明 つづくより
経年劣化で擦り切れても違う表情として楽しめる布。擦り切れるまで裏面の色がわからなければ、驚きが生まれますね。
ここまで鑑賞してきて、ようやくミナの作品の方向性が見えてきました。
意外性を楽しむ姿勢
ですね。多様な個性を生むためには、「こうあるべきだ」という考え方は不要なんですね。
ここまででも盛りだくさんですが、やっと「shell house」にたどり着けました。
shell house(シェルハウス)
コンパクトなリビングです。
照明がかわいいです。
shell house(シェルハウス)は「簡素で心地よい宿」のプロトタイプだそうです。
開口部は開放感があります。
見上げると螺旋状の垂木が見えます。そしてロフトっぽいですが、2階ですね。
キッチンです。宿なので、これくらいコンパクトなシンクでも問題ありませんね。
コンロも二口あるので、数日間滞在しても問題なさそう。
キッチンから奥へははいれませんでしたので、覗き込んで撮影。
協力企業にLixilと記載がありましたので、Lixilのトイレですね。
階段も螺旋状に上っています。
割と勾配のきつい階段です。
直接入れない箇所は映像で見ることができます。
こちらはスタディ模型でしょうか。
貝をモチーフにしています。
1階平面図と2階平面図です。
1階平面図のトイレ上部がシャワースペースになっています。浴槽はない設定なんですね。
であれば、近くに温泉街などがあると良いですね。
キッチンの詳細図面です。カウンター下部に冷蔵庫が収納されています。
ここまでの図面は中村好文先生。
そしてこのスケッチは皆川さん。
皆川さんのアイデアスケッチをベースに中村好文先生が設計をしたということですね。
shell houseが実際に建築されるときに、ワークショップ形式で、一軒一軒施工体験が出来ると楽しそうです。
個人的には、ここまででお腹いっぱいです。
根 drawings(挿画)
皆川明の個人の活動にスポットを当て、新聞連載のために描いてきた挿画をまとめて紹介します。2016年にスタートした朝日新聞の「日曜に想う」のための挿画は、毎週1回、現在でも連載のために描き続けれれています。日本経済新聞の「森へ行きましょう」(川上弘美作)のための挿画は、2016年から2017年までの連載で計332枚の絵が描かれました。皆川が描く繊細なタッチの線や点、独特の色づかいはテキスタイルの図案とはまた異なる表現に満ちています。
ミナ ペルホネン/皆川明 つづくより
独特の雰囲気の挿絵です。ひとつひとつをじっくり見るというより、気になった絵に目をとめていくといった感じで鑑賞してきました。
連載中の「日曜に想う」は以下のリンク先で読めますが、有料記事のため記事は読めませんが、挿絵は見れますよ。
土 memory of clothes(洋服と記憶)
服やプロダクトを購入する時、私たちは何年先の未来を想像するのでしょうか。ミナ ペルホネンは時の経過によって色褪せることのない服を追求してきました。何年にもわたり、その人の人生に寄り添い、ともに時を重ね、使い手の人生の一部になっていく服。ここでは、服とその持ち主との関係性に焦点を当てて、個人が所有している愛用品の15点を、彼らが語る復とのエピソードと共に紹介します。
ミナ ペルホネン/皆川明 つづくより
これまで、服というものを、「その人の人生に寄り添い、ともに時を重ね、使い手の人生の一部になっていく」という捉え方をしたことがありませんでした。
着こまれた服と愛用者のコメントで構成されています。
その時着ようと思った服と、その時の出来事を関連付けて記憶していることなど、ありませんでした。でも、奥さんが「この服って、あそこに出かけた時に来ていた服だよ。」などとと言っていたこと思い出しました。
毎シーズン、2択か3択しかない僕にとっては、いつも同じ。。。
記憶が結びつくと、大変(-_-;)
大量消費の思考で生活していると生まれない考え方ですね。
空 25years
皆川明が「せめて100年つづくブランド」という想いで始めた活動は、2020年に25周年を迎えます。展覧会の最後に、ミナ ペルホネンの活動の軌跡と、皆川明がこの展覧会に込めた思いをインタビュー映像でご覧いただきます。
ミナ ペルホネン/皆川明 つづくより
さいごに
鑑賞後はグッズも買うことができました。限定デザインのカタログ。本当はタンバリン柄が欲しかったのですが、本屋でも買えるとのことで断念。残念。
正直、ここまで楽しめる展覧会に出会ったのは初めてです。
ファッション、プロダクト、インテリア、建築などデザインに関わる多くのものが対象になっていたということもありますが、設立当初の大量消費の時代に、真逆のコンセプトを掲げていたという人となりが、感じられたからかもしれません。
とにかく優しいおじさんなんだろうなあと(笑)
次回開催は
- 2020年6月27日(土)→2020年8月16日(日)
- 兵庫県立美術館
の予定ですね。
コロナの影響で中止にならないことを祈っています。